組み立て自動化などの工場を物理的に改善する技術は、もはや差を出しにくい。コンピューターのシミュレーションと現実の生産ラインを同期させて運用するデジタルツインなどでドイツの最新スマート工場は、一歩先の生産性向上を進めている。

「アンベルク電子製品工場(EWA)は主力工場であると同時に、デジタル工場戦略の実験場であり、最新のショーケースだ」。独シーメンスでFA(ファクトリーオートメーション)事業のCEO(最高経営責任者)を務めるラルフマイケル・フランケ氏はこう胸を張る。同社のデジタル工場向けの新技術の多くは、EWAで最初に試され、実際の製造に利用して改良を加え、成果を確認したうえで製品・サービス化されている。「市場が求めている技術を自分たちの製造現場でまず試して改良し、実力を磨いてきた」(フランケ氏)
EWAはシーメンスのFA事業を支える比較的小型の工業用電子機器の主力組み立て工場だ。サッカーコート1.5個分ほどの広さに約1300人の従業員が3交代で働く。広さは操業を開始して以来変わっていないが、生産能力は28年で13倍以上に向上。特にデジタル化投資を本格化した2015年以降の伸びはすさまじい。操業開始から15年まで24年間の生産能力の増加がほぼ10倍なのに対し、デジタル化でそこからの数年で約1.4倍に伸ばした。
3つのデジタルツイン
15年に本格的なデジタル工場化に踏み切って以降のEWAは製品の設計から生産ラインの設計、製造、製品出荷に至るすべての工程をデジタルで管理し、効率化を進める。それを支えるのが3つのデジタルツイン体制だ。
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