全2925文字

部品加工などで期待されながら、樹脂向けに比べ普及が進まなかった金属3Dプリンター。小型部品などに用途を絞ることで、小型化・低価格化を実現した新機種が国内外で相次ぎ生まれている。紙のプリンターと同じようにオフィスなどでも活用でき、多様な用途での導入が期待される。

会員向け工房の「テックショップ」では10月からニコンの金属3Dプリンターを利用できる

 「小型で安全なのでビル内の施設にも設置できるようになりました」──。

 施設内の各種の工作機械を自由に使える有料会員制サービスを運営するテックショップジャパン(東京・港)は2019年9月、東京・赤坂にある工房にニコン製の金属3Dプリンターを設置した。10月以降、会員は自身の設計データに基づいた造形を試せる。

 テックショップジャパンが金属を造形できる3Dプリンターを導入したのは初めて。設備の大きさや重さ、価格が導入の課題になっていた。19年いっぱいは試用期間としてニコンが費用を負担し、利用状況を見ながら20年以降に本格導入するかどうかを検討する。

高価格が普及を阻んできた

 3Dの設計データを入力するとその形状の部品を造形する3Dプリンター。1層ずつ断面形状を作って重ねていくことで立体化するため金型などが不要で、材料を削っていく従来の加工方法では難しかった複雑な構造を実現できる特徴がある。

 世界の3Dプリンターの年間出荷台数は毎年20%近く伸びており、18年には30万台程度に達したとみられる。形状を確かめるために試作品を作る用途や、仕様が毎回異なる一品物の部品を作る用途などに使われている。

 その3Dプリンターのうち、製品に組み込む部品を製造できると期待されているのが金属3Dプリンターだ。米ゼネラル・エレクトリック(GE)傘下のGEアビエーションが航空機エンジンの部品を製造した例もある。高温環境で利用する配管やノズルなどの部品や、強い応力がかかる歯車などの部品を試作し、性能や耐久性などを評価するのにも役立つ。

出荷台数はまだ2000台強にとどまる
●世界の金属3Dプリンター出荷台数
出所:米ウオーラーズアソシエイツ

 ところが、期待に反して金属3Dプリンターの出荷台数は伸びていない。米調査会社のウオーラーズアソシエイツによれば、18年の世界出荷台数はわずか2300台程度で3Dプリンター全体の1%にも満たない。市場の大半を占めるのが樹脂(プラスチック)で造形する機種だ。簡易なものでは数万円の機種もあるなど低価格化が進んでいる。

 一方、金属向けは実製品への組み込みを意識するあまり、大型品の加工や高速加工を狙ったものが大半だった。そのため「1台当たり1億円以上という価格と、装置の大きさが導入の障壁になっていた」(ニコンの柴崎祐一次世代プロジェクト本部長)。

 その壁を破ろうと、国内外のメーカーが3000万円程度で小型の金属3Dプリンターに相次ぎ参入している。海外メーカー製3Dプリンターの販売を25年以上手掛けてきた丸紅情報システムズの真弓剛モデリングソリューション部部長は「樹脂の3Dプリンターは1000万円以下の小型機が登場してから普及が始まった。価格破壊で金属3Dプリンターの普及が一気に進むのではないか」と予想する。

安価な金属3Dプリンターが相次ぎ登場
●本体が数千万円の主な金属3Dプリンター
日経ビジネス2019年9月30日号 92~94ページより目次