環境意識の高まりから、石油由来のプラスチックの使用を控える動きが世界的に広まっている。代替素材の需要の高まりが予想され、日本でも大手やスタートアップ企業が新素材の開発を急ぐ。紙や植物、石灰石など多様な材料を使い、コストや耐久性などの課題を乗り越える企業が出てきた。
「脱プラスチック」の機運が急速に高まっている。日本政府は東京五輪が開催される2020年までをめどにレジ袋を有料化する方針を示している。今年6月の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)でもプラスチックによる汚染問題は主要議題の一つとなり、各国は50年までに新たな海洋汚染をゼロにする目標の導入で合意した。
消費者の身近なところにも「脱プラ」の動きは広がっている。サントリーホールディングスは30年までに、ペットボトルで新たに石油由来素材を使わない目標を掲げるほか、日清食品も今年12月からカップヌードルに植物由来8割の容器を使う。環境・社会・企業統治を重んじるESG投資を意識した食品や小売りなどの企業の動きも脱プラを後押しする。
そうした潮流を受け、プラスチックの代わりとなる新素材を開発する動きも活発になってきている。
プラスチック代替素材の実用化に近付いているのが、素材開発のスタートアップ企業、TBM(東京・中央)だ。同社が原料とするのは石灰石。プラスチックの代替素材では石油由来の樹脂も混ぜ合わせるのが一般的。だが、同社では原料の5~7割を石灰石にする。山口太一CSO(最高経営戦略責任者)は「石灰石は世界中に無尽蔵にあり、木や石油に比べても枯渇の心配がない」とそのメリットを語る。
日本のプラスチック消費量は年間1000万トンといわれるが、石灰石は日本国内だけでも約200億トン以上あると推定される。石灰石の原料価格は数円から数十円で、石油由来樹脂よりも安く調達できる。紙や石油由来のプラスチックに比べ、製造段階や廃棄時の環境負荷が小さいのも利点だ。
製造方法はこうだ。まず石灰石を砕き、石油由来の樹脂と混ぜ合わせる。このとき、石灰石と樹脂の割合を変えることで、名刺やレジ袋、クリアファイルなど様々な製品に加工することができる。
TBMが開発した素材は、もともと紙の代替物として名刺やメニュー表などに使われていた。成型技術が向上したため、最近では食品容器やレジ袋なども製造できるようになった。吉野家などの外食大手も含め約4000社に納入実績がある。
コストも下がってきており、名刺やメニュー表は紙由来のものと同等かそれ以下、食品容器やレジ袋はプラスチックと同等か多少高い程度だという。
同社は18年に31億円の資金調達に成功した。宮城県に2つ目の工場を20年に竣工させる予定で、海外での事業展開も見据えて生産を拡大する。
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