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作業支援や歩行支援に使われてきた「アシストスーツ」の市場が急拡大している。約20年前から開発が進むが、このところ機能が大幅に向上。今後10年ほどの間に仕事や生活を大きく変えそうだ。

❶JALグランドサービスの手荷物の運搬・積み込み作業にアシストスーツを導入❷南都銀行の文書管理段ボール運搬作業などにも活用❸介護などの現場でもアシストスーツを活用❹大和ハウス工業の重量物運搬作業にも導入(❶❷はアトウン製品、❸❹はサイバーダイン製品)(写真=❷:アトウン、❸❹:大和ハウス工業提供)

 「我々は人間と機械のハイブリッド化が目標だ」(パナソニック子会社ATOUN=アトウン、奈良市=社長の藤本弘道氏)。こうした話が真顔で語られるほど「アシストスーツ」の開発が本格化している。

 アシストスーツは重い物を持ち上げる負荷を軽減したり、歩行を支援したりする機械装置で、近年は体の上から装着するだけで自分の体の一部のように動作する製品が出てきた。開発は約20年前から進められてきたが、この1年ほどで急速に利用が拡大してきた。

東京五輪の重量挙げで活用

 アシストスーツ活用に向いているのは、重量物を繰り返し移動させる作業や、中腰などの姿勢を長時間維持する作業だ。

 アトウンが開発した製品は2020年の東京五輪・パラリンピックでも20台以上を使用する予定だという。主な用途は、パラリンピックのパワーリフティング競技で重りを交換するサポート作業だ。重りを替えながら記録を伸ばすルールのため、スタッフは1日に何百回も重りを付け替える。作業は負荷が大きいので、スタッフは同社製品の導入で負荷を軽減する。

 アシストスーツの導入をけん引するのは、重い荷物を扱う物流業界や体への負荷が大きい介護現場、製造工場だ。理由の一つは大幅な人手不足。少子高齢化が進み労働人口が減少するなか、これらの業界はきつい仕事を嫌って離職率が高い。その分、新人に指導できるベテランが少なく、生産性が低下する面もある。

 厳しい状況のなか、企業が飛びつき始めたのがアシストスーツだ。いち早く導入した訪問介護サービス運営企業では、離職率が大幅に減少したうえ、労働環境改善を意識する企業としてイメージアップにもつながったという。

 アシストスーツ市場が急拡大するもう一つの理由は製品の性能向上にある。特に大きいのが、電池技術の進歩だ。モバイル機器やEV(電気自動車)向けに、電池の小型軽量化や大容量化、低価格化が進んだことが、アシストスーツにとっても強力な追い風になっている。

価格が下がれば用途は一気に拡大
●販売価格の動向とアシストスーツの活用領域
日経ビジネス2019年7月29日号 82~84ページより目次