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相次ぐ高齢者ドライバーによる交通事故を受け、車の衝突回避技術への関心が高まっている。新型車では衝突被害軽減ブレーキや急加速防止、車線逸脱抑制など事故を未然に防ぐ装備が標準になっている。部品メーカーも技術を磨くほか、既存車両に後付けする装備などにも広がりが出てきた。

予防安全技術の標準搭載が増加
●自動車の衝突事故を防ぐ主な先進技術

 運転中、急に飛び出してきた子供の姿が。「あっ!」と急ブレーキを踏もうとする前に、クルマが自動的に急停止して事故を回避する──。

 カメラやセンサーで周囲の車両や人を認識し、ブレーキやステアリングと連携して衝突を防いだり被害を軽減したりする技術は、最近の新型車では標準的なものになりつつある。高齢者による交通事故が相次いだことで改めて脚光を浴びているクルマの予防安全技術はどこまで進化しているのか。

 衝突被害軽減ブレーキの先駆けとなったのが、SUBARU(スバル)が2008年に実用化した左右2つのステレオカメラを活用する「アイサイト」だ。公益財団法人・交通事故総合分析センターのデータを基に16年に算出したアイサイト搭載車の事故発生件数は、非搭載車に比べて車両同士の追突で約8割、対歩行者では約5割少なかったという。

 アイサイトの最新版では、カメラがとらえた画像を基に物体を立体的に認識し、大きさや輪郭からクルマだけでなく歩行者や自転車も識別可能。前方車両との速度差が時速約50km以内であれば衝突を回避、または被害を軽減できる。歩行者を避けきれないと判断した場合、歩行者の頭部がフロントガラス下部など硬い部分に直撃しないようにする「歩行者保護エアバッグ」が作動する車種もある。

夜間でも歩行者認識

 こうした衝突軽減技術には弱点があった。夜間の暗さだ。警察庁によると、歩行者の死亡事故の4割が夜間に起きている。人間はクルマよりも小さくライトの点灯もないため、人間の目と同じようにカメラやセンサーで検知して衝突軽減ブレーキなどと連携させることが難しかった。

 ただソニーやデンソーなどが手掛ける画像センサーの精度が向上したことで、課題が克服されつつある。

 トヨタ自動車が18年の新型車から改良して投入した先進安全システム「トヨタセーフティセンス」。カメラとミリ波レーダーの組み合わせで、月明かり程度の夜間でも歩行者を認識し、時速約10~80kmであれば衝突軽減ブレーキが作動する。カメラの映像をソフトウエアが解析することで、ロービームで照らされた下半身しか見えなくても歩行者と認識できるようになった。