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大型装置や研究機関での調査が必要だった肌解析が進化を遂げている。ビッグデータを基に肌の現在の状態や将来の「老い」を予測し、個人に最適なスキンケア商品などを提案する。男性に特化した機器も登場。マスブランドでは飽き足らない消費者のニーズを満たす。

 「あーうー、あーうー」「いーうー、いーうー」。女性がタブレットに向かって口を動かすと、3分で肌の解析データが示された。

 ポーラ・オルビスホールディングス傘下のポーラ(東京・品川)が7月から全国の店舗で導入を始めた肌解析技術「ポテンシャル分析」は、肌の動きから内部構造を推定する。5~10年後の肌の老化の度合いを予測し、パーソナライズに特化した「アペックス」ブランドで一人ひとりに合ったスキンケア商品を提供する。

肌の動きから内部を推測

 分析では、まず声を発することにより生じる肌の縦・横の動きをタブレットで計14秒間撮影する。1秒の動画を60枚の静止画に変換し、肌の動く速さや方向といった約2000種類の特徴を抽出するなどして、合計170万項目のデータを弾き出す。

 これをAI(人工知能)によって導き出された推定式で解析し、肌の表面の「表皮」やその下の「真皮」、さらには「皮下組織」の弾力やコラーゲンの構造を推測する。その結果から、老化の進行度合いや、しわ・たるみ・くすみといった肌トラブルを予見できるという。

 「表情の動きから内部構造も推測できることがポテンシャル分析の開発につながった」と同社の菅千帆子アペックスブランドマネージャーは話す。老化が進んでいない状態では表情筋と肌がスムーズに連動するが、老化した肌ではタイムラグ(ずれ)が生じる。研究で、肌内部の状態が表層部の動きの特徴となって現れることが明らかになった。

 延べ300人以上の女性から得た肌の動きの特徴と、肌内部の状態をひもづけ、機械学習で表情を作る際の肌の動きから内部構造を明らかにする推定式を構築。これまで静止画では解析しきれなかった肌の内と外の連動性を測定できるようになった。

 従来の肌解析は肌細胞を採取した後、専門機関で分析するプロセスが必要で、結果が手元に届くまでに1週間ほどかかっていたという。加えて肌の浅い部分の情報しか得られず、分析の精度も90%程度だった。機械学習を使った推定式では精度を100%に近づけることができるという。

外から見えない肌内部の状態を推定する
●顔の動きと老化に伴う皮膚の動きの違い
(イラスト=PIXTA)
日経ビジネス2019年7月8日号 80~82ページより目次