全2745文字

大量生産と個別設計を同時に実現するマスカスタマイゼーション。新たな製造方法として、このところ企業に広がりを見せている。これを支えるのが設計と製造の新しい技術だ。

機能・性能、趣味・嗜好の両方に有効
●マスカスタマイゼーションの導入が進む製品
マスカスタマイゼーションによって、顧客の趣味や嗜好に関する個別ニーズを満たせるほか、身体へのフィッティング性を高めるなど、機能・性能面での顧客満足度も向上できる(写真=左上:ビジネスワイヤ、左中:BMW、中上:オリジナル、中下:HOYAビジョンケア、右上:東京大学生産技術研究所、右下:アライン・テクノロジー)

 マスプロダクション(大量生産)とカスタマイゼーション(個別設計・生産)を高い次元で融合する「マスカスタマイゼーション」。この製造方式に取り組む企業がこのところ増えてきている。低コスト、短納期という高い生産性と顧客の個別ニーズへの対応という二兎を追い、その両者をともに得ようという取り組みだ。

大量生産と個別ニーズ対応の二兎を追う
●マスカスタマイゼーションへの2つの取り組み

さまざまな分野に広がる

 例えばドイツBMWは乗用車「MINI」について内外装部品のカスタマイズサービスを2018年にスタートした。また米オリジナルが展開する「オリジナルスティッチ」のシャツでは、布地の色や柄、袖や襟のデザインなどを自分の好みで自由に組み合わせられる。そのパターンは10億通りに及び、さらに顧客の身体情報(上半身のサイズ)や好みのフィット感に合わせてシャツをつくる。

 三菱重工工作機械の場合、大型工作機械や歯車加工機において、オーダーメードではないものの、従来も顧客の個別ニーズには対応してきた。しかし、「個別に受注、個別に設計、個別に生産するやり方を続けるより、中量産品の効率的な設計・生産の方法を取り入れたい」(三菱重工工作機械社長の岩崎啓一郎氏)と、マスカスタマイゼーションに取り組んでいる。

 マスカスタマイゼーションの広がりを後押しするのが2つの技術だ。一つは顧客ニーズを製品の設計データへと迅速に反映させる「ジェネレーティブデザイン」。もう一つが3Dプリンティングのように、形状が1つずつ異なる部品でも低コストかつ短納期で生産する「アディティブマニュファクチャリング(付加製造)」だ。設計と生産の両面からマスカスタマイゼーションに向けた取り組みが進んでいる。

日経ビジネス2019年6月3日号 86~88ページより目次