政府が年金生活者に対する5000円程度の給付金の支給を検討しているが、夏の参院選を前にした票集めと言わざるを得ない。これに限らず現政権のバラマキ政策は目に余る。

 極めて姑息(こそく)だ。年金生活者に1回限りで5000円程度の給付金を支給する案が政府・与党内で浮上している。

 2022年度の年金額が0.4%減額される分を補うとして約2600万人に配るのだという。自民、公明両党の幹事長が岸田文雄首相に提言し、首相は「しっかり対応したい」と応じたという。

 4月分以降の年金は、国民年金の満額受給者で月259円、夫婦2人の厚生年金の標準世帯で903円、それぞれ減額になる。今回の減額は現役世代の賃金が過去3年の平均で0.4%下がったことを受けての措置だ。

 年金の主な財源は現役世代が月々払う保険料。このため現役世代が受け取る賃金の増減や消費者物価の上昇・下落にひも付いて、年金が減ったり増えたりするのは当然といえる。それなのに与党は、自らが決めた年金法のルールをないがしろにして、給付金を支給するという。こうした恣意的な年金操作に国民は果たして納得するだろうか。

 しかも、今夏は参院選が控えている。減ったところに振り込まれる5000円など、選挙を前にした票集めと言わざるを得ない。

 ただでさえ、新型コロナウイルス禍で現役世代は苦しんでいる。厚生労働省が2月に発表した21年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、基本給や残業代を合わせた1人当たりの現金給与総額は名目賃金ベースの月平均で31万9528円。3年ぶりに前年比0.3%増えたが、これはあくまでコロナ禍に見舞われた20年の反動の影響が出ただけ。19年の水準には戻っていない。

 物価変動を考慮した実質賃金は横ばいとなっており、回復感に乏しいのが実態だろう。それなのに年金受給者には減額分補填の大盤振る舞いをしようとしている。さすがに与党の一部から慎重論が出始めたが、議論は予断を許さない。

次ページ 広がる世代間の年金格差