夏の日本列島を襲った新型コロナ第5波の危機はひとまず去った。だが、人類を脅かす病原体はコロナウイルスだけではない。特に懸念されるのは、薬の効かない薬剤耐性菌のまん延だ。

 医療関係者でなくても、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)という細菌の名前を耳にしたことがある人は多いだろう。MRSAは黄色ブドウ球菌のうち、メチシリンという抗菌薬が効かなくなったものだ。

 戦後間もなく日本で抗菌薬のペニシリンが使われ始めると、これを無力化する酵素を持つ細菌が現れた。この細菌による感染症を治療するために開発されたのがメチシリンだ。だが、1960年にメチシリンが登場した約1年後にはMRSAが出現し、医学界に驚きをもって受け止められた。

 以来、人類と細菌はいたちごっこの“生存競争”を繰り広げてきた。だが先進国を中心に、生活習慣病が問題視されるようになると製薬企業の研究開発もそちらにシフト。新たに承認される抗菌薬は80年代をピークに減少し始めた。

 そんな中、社会に大きな衝撃を与えたのが、2014年末に発表された英エコノミストのジム・オニール氏らによる予測だ。薬剤耐性(AMR)の細菌や微生物による世界の死者数は、13年の約70万人が、50年に約1000万人まで拡大するという内容だ。経済的損失も50年までの累計で、100兆ドルに達するとした。

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