東芝が精力的に基礎研究をアピールしている。ただ、経営陣が発展途上の技術に過度な期待を寄せているようにも見える。本当にお金を生むのか、冷静な判断が求められる。

 アクティビスト(物言う株主)との対立が深刻化し、ガバナンス(企業統治)不全に陥っている東芝。そんな同社が研究開発成果のアピールに躍起になっている。ニュースリリースを発表するだけでなく、オンラインでの発表会を頻繁に開催して技術の詳細を説明することも多い。

 9月中旬までの1カ月間だけでも、数多くの技術を発表した。9月10日に発表したのが、エネルギー変換効率を世界最高水準に高めた「ペロブスカイト型」と呼ぶ次世代太陽電池。印刷技術を使って製造できるフィルム型の太陽電池で、薄くて軽いのが特徴。変換効率は約15%と従来のシリコン型の太陽電池に迫るという。

 15日には、画像に対する質問に世界最高精度で回答できるというAI(人工知能)の開発を発表した。画像に映る人やモノだけでなく、背景や色などの情報も認識できるため、幅広い質問に回答できるという。8月末には次世代の暗号通信技術である「量子暗号通信」で、ゲノム解析データを分散保管する実証実験に成功したことを明らかにした。

 実は東芝はここ数年、基礎研究のアピールに力を注いできた。これには2015年から続いた経営危機が大きく影響しているのだろう。不正会計の発覚以降、東芝は経営危機を脱するために家電や半導体メモリー、医療機器といった主力事業の多くを切り離さざるを得なかった。次々に新商品や新技術が生まれ世間にアピールしやすい家電や半導体メモリーを失ったことで、その対象を研究開発にシフトせざるを得なかった側面はあるだろう。

 そもそも、東芝の研究開発力への評価は高い。世界知的所有権機関(WIPO)が19年に発表した調査結果によると、世界中の企業が注力するAI関連の累計特許出願数で、東芝は世界3位、日本では首位だという。かつては地味な存在だった将来の事業の種にスポットを当てること自体は、広報戦略という点では正しいかもしれない。

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