「半導体は産業のコメ」といわれる。しかし今やコメよりも重要度は高い。コロナ禍の日本はワクチンを国内で開発・製造できずに苦しんだ。半導体で外国から「兵糧攻め」に遭えば死活問題だ。
国民1人当たりのコメ消費量は、半世紀あまりで半減した。最近は糖質制限ブームで口にしない人も多い。稲作農家には申し訳ない言い方になるが、現代人はコメ抜きでも生活できる。
半導体はそうはいかない。世界の出荷個数は1兆個を超え、単純計算で1人当たり年間約130個を消費している。スマホやパソコン、車をはじめ、あらゆる電子機器に内蔵され、現代人の生活は半導体抜きには成り立たない。
その半導体で日本の地位が低下している。1980年代、日本企業は約5割の売上高シェアを握っていた。上位10社中、6社はNECや東芝などの日本勢だった。現在は1割を切っており、上位を米国、韓国、台湾勢が占める。
日本にもフラッシュメモリーのキオクシアやイメージセンサーのソニーグループなど、特定分野に強い企業はある。しかし、デジタル機器の頭脳に当たるロジック半導体では、米インテルや米エヌビディア、韓国サムスン電子などに歯が立たない。
とりわけ深刻なのが製造分野だ。半導体受託生産(ファウンドリー)最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が世界シェアの半分近くを握る。世界のトップ企業は、狭い面積に回路を詰め込む微細化技術でしのぎを削る。その競争で日本勢は離脱した。
半導体産業は設計なら設計、製造なら製造と、特定分野に強みを持つ企業が分業する時代に入った。ところが日本勢は設計から製造まで自前で手掛ける「垂直統合モデル」に固執するあまり、再編が遅れた。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り951文字 / 全文1659文字
-
【春割】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【春割/2カ月無料】お申し込みで
人気コラム、特集記事…すべて読み放題
ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「ニュースを突く」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?