ファーストリテイリングの時価総額が先ごろ、アパレル業界で世界首位となった。バブル崩壊から約30年。凋落(ちょうらく)が目立つ日本企業の中にあって、なぜ同社は躍進を続けたのか。

 日経平均株価が最高値を付けた1989年。世界の時価総額上位10社のうち、7社は銀行を中心とした日本企業が占めていた。ところが現在の上位は、米国の「GAFA」や中国の「BAT」と呼ばれる巨大テック企業ばかりだ。日本勢で上位50社に入るのはトヨタ自動車だけである。

 多くの業種で、日本企業は外国勢に逆転を許した。対照的なのが「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングだ。時価総額は一時10兆円を超え、「ZARA」を擁するスペインのインディテックスと首位を争っている。

 ファストリは今年、前身の小郡商事から今の社名に変更して30年の節目を迎えた。売上高は30年前の約400倍と、日本の上場企業上位100社の中で最も伸び率が高い。同社の躍進の理由はどこにあるのか。

 先日、筆者がキャスターを務めるBSテレビ東京の報道番組に、柳井正会長兼社長が生出演した。その際、こうした疑問をぶつけたところ、返ってきた答えは以下の通りだ。

 「多くの日本企業はバックミラー経営を続けている」

 クルマのバックミラーに映るのは、走行した後の道だ。「世界の競争環境は目まぐるしく変わっているのに、日本人は先輩の跡を追いかけて、復習ばかりしている。昨日までやっていたことを繰り返すだけでは、成長できない」

 「成功の復讐(ふくしゅう)」という言葉も印象に残った。「日本市場はそれなりに大きく、バブル期の成功体験も強い。多くの企業はそこに安住してしまった。今は成功の復讐に直面している」

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