大企業同士の合併や統合が進んでいる。「対GAFA」という言葉から生まれる脅威論は、ともすれば健全な競争環境を失わせる。日本は進むべき指針を明確に示す時期に差し掛かっている。

 ヤフーを傘下に持つZホールディングスとLINEの経営統合が3月1日に完了し、新たなスタートを切った。国内総利用者数は3億人超、グループの従業員数は2万3000人に上る。国内でも類を見ない巨大プレーヤーを経営陣がどのようにかじ取りしていくのか、高い関心が寄せられている。

 振り返れば2019年11月、初めて両社が経営統合を発表した会見の場で「インターネット業界は勝者総取り。強い企業はより強くなってしまい差が開いてしまう産業だ」(LINEの出澤剛社長)と前置きした上で、「テックジャイアント」という言葉を用いながら米国のGAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)などの脅威を前面に押し出し、経営統合の必要性を訴えた。

 だが、公正取引委員会の審査を終え、無事経営統合へと歩を進めた両社が開催した3月1日の会見では、GAFA脅威論を積極的にあおる発言は消えていた。

 現在、接待問題で国会を騒がせているNTTグループも同様。20年9月に開かれたNTTドコモの完全子会社化の会見の場で、NTTの澤田純社長は「GAFAが通信分野に浸透してきている。総合力を高めなければ」と危機感をあおった。同年12月、ドコモは上場廃止となり、NTTの完全子会社となった。

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