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押印原則や対面原則といった日本の独自慣習の見直しが新型コロナウイルスの感染拡大を機に広がっている。だが、最後の壁は地方自治体。日本社会全体のデジタル化の成否を握る。

 人から人への感染リスクを減らすためにマスクがある。だが、職場や学校の現場では柄や色のついたマスクを認めない風潮があるという。有事の珍事と一笑に付すのは容易だが、論理がすべてにおいて優先されない日本社会には同様の澱(おり)が数多く残る。

 「印鑑」の存在もその一つ。業務効率を落とすと分かっていながら、日本に残り続けてきた。だが、コロナ禍で対面接触が制限される中、ようやく日本社会が動き出した。

 契機となったのは皮肉にも「日本の印章制度・文化を守る議員連盟(通称・はんこ議連)」で会長を務める竹本直一IT担当大臣が4月14日の記者会見で発した言葉だ。

 「しょせん民・民の話なんで」。日本特有のはんこ文化がテレワークの障害になっているのではないかと問われた竹本IT担当大臣はこう答えた。この発言を受けたGMOインターネットやヤフーといったIT企業大手が相次いで電子契約を表明し、経団連も印鑑の存在に対し「全くナンセンスで、美術品として残せばいいだけだ」(経団連の中西宏明会長)と呼応するなど、新旧産業が歩調を合わせる結果となった。