新型肺炎が経済に与える影響が懸念されている。感染拡大が長引けば東京五輪開催にも響く。最初に風邪を引いたのは中国経済だが、こじらせるのは日本経済。そんな展開が危ぶまれる。

 新型肺炎の世界経済に与える影響はどの程度か。専門家の間では、2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)と比べるケースが多い。当時は日中経済ともに、一時的に成長が鈍化したものの、不況に突入するほどの深刻な事態には陥らなかった。

 今回は17年前よりも影響が大きくなりそうだ。感染者数や死者数はすでにSARSを上回っている。人やモノの移動は厳しく制限され、春節明けの工場や店舗の再開も一部にとどまる。

 何よりも03年当時と比べ、中国の存在感が増した。世界のGDP(国内総生産)に中国が占める割合は、03年の4%から19年には16%へと拡大。中国の停滞は、世界各国の生産、輸出、消費、商品市況に多大な影響を及ぼす。

 詳細な分析は専門家に任せるとして、筆者が指摘したいのは、中国よりも日本経済の方が後遺症を残すのではないかという懸念だ。もちろん震源地である中国の方が、一時的な下落幅は大きくなるだろう。だが、その後の回復度合いには違いが生じるのではないか。

 なぜなら、両国の経済には地力の差があるからだ。中国経済は、米中摩擦のあおりを受けた停滞から抜け出しつつあった。在庫調整が一段落し、経営指標に改善の兆しが出ていた。

 もちろん中国経済にもリスクはある。毎年10%以上の高度成長を謳歌していたSARS当時と比べれば、6%前後を目標とする現在は勢いが鈍っている。今年の成長率が5%前後まで落ち込むと試算するエコノミストもいる。ただマイナス成長になるわけではない。

 中国経済における最大のリスクシナリオは、金融システム不安だ。03年当時と比べ、地方政府や民間企業の債務が膨らんでいる。工場や店舗の休止が長引けば、キャッシュフローに目詰まりを起こす企業が続出する懸念もある。

 それでも中国には金融・財政政策を講じる余地がある。中国政府にとって、20年はGDP倍増計画の最終年に当たる。習近平政権はメンツをかけて、新型肺炎による成長の剥落を、年後半に取り戻そうとするだろう。

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