日韓の安全保障に関する「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」は、破棄か延長かでぎりぎりまでもつれた。両国の関係悪化が原因だが、韓国の景気低迷が日本の想像以上に影響している。

 GSOMIAは政府間で安全保障の情報をやりとりするための取り決めである。例えば、北朝鮮がミサイルを発射した場合などに、その進路や速度、さらにどういうミサイルなのかといった情報を保護・共有するための協定といえば、分かりやすいだろうか。

 日韓、日米、米韓それぞれの間で締結されており、韓国が8月22日に日韓GSOMIAの破棄を決定して以後、米国を巻き込む外交問題となってきた。日本人にとって理解しにくかったのは、韓国側が破棄の理由として、日本が7月から始めた輸出管理の厳格化を挙げたことだろう。

 日本は同月初め、半導体や有機ELの生産に必要なフッ化水素など素材3品目の韓国への輸出管理を強化することを発表した。これら品目について「韓国側の貿易実務の現場で不適切な事例があった」というのが決定の理由だ。従来、包括的に輸出を許可していたのを個別許可に切り替えた裏には、化学兵器製造などにも転用可能なこれら品目の一部を韓国から他国に移している疑いが出てきたことがあるとされる。

 これについて日本では、7月の対応は禁輸措置ではなく、「半導体や有機EL生産に使うレジストなどのうち、今回対象となっているのはごく一部の高品質のものだけ」(細川昌彦・中部大学特任教授)といった声も広がった。

 しかし、韓国側から見る景色は全く違った。「3品目の輸出管理強化は、韓国経済に大きな影響を与える。日本は徴用工訴訟の判決への対抗措置ではないというが、やはり対抗措置であると受け止められる」。筆者が10月に取材で訪れたソウルで大手シンクタンクの研究者は強く言い放った。

 このギャップの裏には、停滞感が強まっている韓国経済の現状がある。実質GDP(国内総生産)の成長率は2017年の3.2%から18年は2.7%に減速。19年の1~3月期は前期比でマイナス0.4%と、17年第4四半期以来のマイナス成長に落ち込んだ。

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