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香港市民が 「逃亡犯条例」改正案の撤回を求め、「高度な自治」を巡る香港政府との攻防が激しさを増す。だが、中国とは異なる制度を保証する「一国二制度」の形骸化は止まりそうにない。

 香港政府トップの林鄭月娥・行政長官にとっては手痛い失点だ。6月15日、刑事事件の容疑者を中国に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」の改正を期限を設けずに延期すると表明したにもかかわらず、その翌日、主催者側の発表で200万人規模のデモが起きた。市民は改正案の完全撤回と林鄭長官の辞任を求めており、6月18日正午時点では事態が収拾する兆しは見えていない。

 香港政府が逃亡犯条例の改正に動いたきっかけは、昨年2月に台湾で起きた殺人事件だ。恋人の殺害容疑がかかった香港の男が台湾で逮捕される前に香港に逃げ帰った。だが、香港と台湾の間には容疑者を引き渡す協定がない。そこで、香港政府は相手国・地域から要請があれば、容疑者を移送できるように条例を改正しようとした。

 同条例は香港が英国から中国に返還される前の1992年に制定された。司法制度や人権が十分に守られる政府との間で犯罪人を引き渡せるようにするもので、香港は米国や英国、韓国など20カ国と協定を結んだ。ただ、中国は含まれていない。当時、香港を統治していた英国が89年に中国・北京で起きた天安門事件を憂慮したためとされる。