全1666文字

韓国サムスン電子の事実上のトップ、李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が5月中旬に来日した。贈賄事件で裁判中の訪問には、日本との関係を再び深めようとするサムスンの意向が透ける。

 李氏は日本滞在中、3月にサムスンが開設した東京・原宿のスマートフォン(スマホ)のショールームを視察したほか、NTTドコモ、KDDIの両社を訪問したもようだ。サムスン幹部によると、「今後も数カ月に1度ぐらい訪日する見込み」という。

 李氏の訪日はサムスンの対日ビジネスがここ数年で変貌した実情を映している。長く日本を調達の最重要拠点として活用したサムスンは、部品や材料、製造装置といった日本の調達網を今後も変えるつもりはない。今回の目的は営業だという。これまでも有機ELパネルやDRAMのような中間財を日本に供給してきたが、近年は完成品を増やそうとしている。基地局で使う通信機器ではKDDIが重要な得意先。ドコモにもかねて秋波を送っている。

 スマホ端末「ギャラクシー」は日本市場のシェアが1割に満たないが、知名度は上がっている。米中摩擦により日本でも華為技術(ファーウェイ)製品が排除されるなか、出荷を伸ばす余地は大きい。素材・装置を日本から買い、中間財を売るという分業サプライチェーンはそのままに、李氏は完成品の販路としての日本に期待している。

 日本でビジネスを伸ばす局面を迎え、李氏は今後、「日本との関係をより密接に、大切にし始める」(サムスン幹部)はずだ。自身は慶応義塾大学大学院に、父親の李健熙(イ・ゴンヒ)会長も早稲田大学に、それぞれ留学経験がある知日派。悪化する日韓関係のなかで自分たちが日本の世論に韓国代表と受け止められていることを知っている。

 悪目立ちしないように注意を払いながら、通信機器のようなBtoB(企業向け)の完成品分野に力を入れていく。ギャラクシーもファーウェイ製品の代替として浸透させていくだろう。日本向けにハイエンド機を多く供給してきた製品戦略を見直す可能性がある。

日経ビジネス2019年6月3日号 16ページより目次