米朝首脳会談後、米韓は合同軍事演習打ち切りを決めた。米朝に韓国、そして中国を含めた複雑なパワーゲームが裏にある。日本の安全保障は大きな影響を受けかねない。

 「韓国との軍事演習をやりたくない理由は、(韓国から)我々が払い戻しを受けていない数億ドル(数百億円)を節約するためだ」

 トランプ大統領は3月初め、毎年春に実施してきた韓国との大規模な合同軍事演習を終了すると発表した際、自身のツイッターにこう投稿した。

 米韓両国が毎年春、実施していた大規模演習は、米軍2万人と韓国軍30万人が参加する野外訓練の「フォール・イーグル」と、コンピューターを使った図上演習の「キー・リゾルブ」の2つ。いずれも北朝鮮との戦争を想定したもので、フォール・イーグルは廃止し、キー・リゾルブは「演習」から「同盟」に名称を変更。期間を2週間から9日間に短縮するなど大幅に規模を縮小する。

 その理由をトランプ大統領は見返りのない費用を削減するためとしたわけだが、直前にベトナムで行われた米朝会談が物別れに終わり、北朝鮮の非核化が頓挫したタイミングだけに違和感が残る。北朝鮮の脅威は去らないのに、米韓側は自ら防衛力を“下げる”格好になるからだ。

 ただ、昨年来の動きを細かく点検すればなるほどとも思える。2017年に米韓は通常規模の合同軍事演習を実施。これに対し、北朝鮮はその後、弾道ミサイルを発射するなど対立を激化させた。しかし、18年春から米朝対話の動きが本格化すると、同時期に実施された軍事演習に米国は原子力空母や戦略爆撃機の参加を見送った。これに対し、北朝鮮はミサイル発射などの威嚇をやめるという“応え方”をした。

 言ってみれば、核ミサイルと軍事演習をトランプ大統領得意のディール(取引)したようなものだろう。今回の合同軍事演習停止は、それをさらに進めたとみれば分かりやすいし、トランプ大統領はなお北朝鮮との交渉に含みを持たせているとも読める。単純な費用削減一本やりではないはずだ。

次ページ 冷え込む日韓軍事協力