新年度は「人」について考える

 新しい年度が始まりました。編集長になって3年目の春です。気持ちも新たに、創刊54年目の日経ビジネスの編集に取り組んでまいります。

 編集方針として毎年、力を入れる重点テーマを決めていますが、2023年度は「ESG(環境・社会・企業統治)」と「人的資本」を選びました。コロナ禍から平常モードに戻りつつある世界で、企業が新たな成長戦略を描くために欠かせない2つの条件だと考えるからです。共通するのは「人」です。

 今号の特集は「攻めの人権経営」。人権重視の経営はESGのS(社会)の重要な要素ですが、それは社員、取引先、顧客などあらゆるステークホルダーの人権を尊重することです。供給網の中に潜む強制労働や児童労働を看過すれば、大きな代償を支払うことになる一方、フェアトレードといった人権課題の解決は新たなビジネスチャンスにつながります。

 特集では、人権への関心が薄い日本人の中で、Z世代の人権感覚は世界標準という指摘があります。多様性を許容するSNS(交流サイト)に慣れ親しんでいるからかもしれません。そんなZ世代の新戦力がまたこの春、企業に入社してきます。我が編集部にも。楽しみで仕方ありません。

(磯貝 高行)

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