多様性を排除する悪意
いじめ、差別、偏見、誹謗(ひぼう)中傷……。人間のコミュニケーションには内面に悪意が潜むものが多くあります。その根源には何があるのでしょう。
ある研究では「悪意は遺伝子の働きに影響を受けていて、社会的集団から部外者を排除するために進化した可能性がある」といいます。自分に似た者に善意を示しても、異なる容姿や価値観を持つ者には悪意を抱くのが人間の性(さが)なのだそうです。
今号の特集「悪意vs企業」の中で「他国人と比べて日本人は特に意地が悪い」という研究結果が紹介されていますが、島国という国土や閉鎖的なムラ社会が育んだ精神性なのかもしれません。
しかしそれを克服しなければ、多様性ある社会や組織を築くことはできないでしょう。SNS(交流サイト)が人々の悪意を増幅する時代。個人の価値観のみを正義として他者を攻撃する世の中は、不幸をさらに増幅してしまいます。
特集の中に出てくる、プロレスラーの木村花さんを失った母・響子さんの言葉が胸を打ちます。「正しいかどうかではなく、優しいかどうかで判断してほしい」。優しさこそ、どんな人間にも普遍的な感情のはずです。
(磯貝 高行)
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