保護主義の波を乗りこなす時代

 グローバル化の時代から分断の時代へ、時計の針が逆回転する世界。米国や欧州、中国は自国・地域の産業を保護し、競争力を高めるための規制やルールの網を張り巡らし、分断に拍車をかけています。

 米国は2022年8月に成立したインフレ抑制法でEV(電気自動車)などの購入支援策の対象を北米で組み立てや部材調達をする製品に限定。欧州連合(EU)は気候変動対策に消極的な国からの輸入品に関税を課す国境炭素調整措置の導入を決めました。米中貿易戦争が続く中、技術覇権を求めてあらゆる規制を駆使する中国は言わずもがなです。

 環境問題、経済安全保障、データ、人権問題まで世界中で厳格化が進む規制の網を、日本企業はどうくぐり抜ければよいのか。今号の特集「規制サバイバル」はそんな問題提起から始めました。

 資源を持たず、貿易で稼ぐしかない日本ですが、22年の貿易収支は約20兆円と過去最大の赤字に陥りました。国富の流出が続けば、日本はどんどん貧しい国になってしまいます。

 保護主義の波を乗りこなし、国内に残る岩盤規制の緩和・撤廃により新しい産業を育てる。日本は2つの課題の解決が求められています。

(磯貝 高行)

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