パナが挑む20年目の「創造」

 昨年11月、松下電器産業(現パナソニックホールディングス=HD)の6代目社長、中村邦夫さんが死去しました。20年ほど前、その改革への気迫に圧倒されながら取材していた私にとっては、経済記者としての原点ともいえる経営者でした。

 「破壊と創造」を掲げた中村さんは松下通信工業など遠心力が強まっていた主要5社を完全子会社化し、疎遠な兄弟会社だった松下電工に電撃的なTOB(株式公開買い付け)を仕掛けます。会長時代の三洋電機買収を含め、周囲の反発を意に介さない冷徹さで現在のパナソニックHDの形をつくりました。

 しかし破壊の後の「創造」である成長戦略を歴代トップは描けませんでした。なぜでしょうか。実はパナソニックHDの事業ポートフォリオを見ると20年前からあまり変わっていないことが分かります。撤退した事業もほとんどなく、海外売上高比率も5割前後で推移したまま。その姿は「失われた30年」の低成長にあえぐ日本の相似形です。

 成長に必要なのはグローバルで稼ぐ事業に集中するための事業の入れ替えと、現場が自ら考え俊敏に動く風土への改革。楠見雄規社長が挑む「創造」の成否を元担当記者として注目しています。

(磯貝 高行)

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