ジレンマなきイノベーション
2025年に世界の製造強国の仲間入りをし、35年に製造強国の中等レベルの位置に到達し、49年には製造強国の前列に立つ──。
15年に習近平政権が掲げたハイテク産業振興策「中国製造2025」の達成年度まで残すところあと2年となりましたが、実は中国建国100年の49年をゴールとする国家目標の一里塚にすぎません。とはいえ、現在の中国の技術水準を見ると「25年に製造強国の仲間入り」という目標は控えめ過ぎたのではないかという気がします。
今号の特集は「チャイノベーション2023」。中国の技術革新の実力を点検する同特集は18年から3回目ですが、歩を緩めない革新のスピードに改めて驚かされます。国の支援も受けたEV(電気自動車)は実用技術で先進国の先を行き、ほんの数年前まで日本のお家芸といわれたリチウムイオン電池の主要部材で中国勢が日本企業を圧倒しています。
「日本では伝統的な産業の力が強いことがイノベーションを阻害している」。18年の特集で中国の経営者がそう話していました。イノベーションのジレンマとは無縁の中国勢との競争に勝つには、過去の成功体験を捨てる覚悟が必要です。
(磯貝 高行)
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