Web3とメディアの未来

 今号の特集は「Web3の正体」。最近にわかに注目されるインターネットの次の形ですが、その正体が分かりにくいのは語り手によって姿を変えるからです。「デジタル世界の民主化」であり、「新しい組織形態」であり、「データ価値の所有」でもある。そのすべてが正しいから厄介です。そこで私も自分が属するメディアの観点から解釈してみます。

 かつて新聞、テレビ、出版などのマスメディアはWeb1.0の到来で情報を独占する立場を失いました。Web2.0の時代にはSNSとスマートフォンの登場で世論をリードする役割まで奪われます。「アラブの春」の民主化運動を先導したのは、我々メディアの力ではありませんでした。

 一方でWeb2.0はフェイクニュースやポピュリズムの扇動を助長し、民主主義の根幹を揺さぶります。「ジャーナリズムの役割が再認識される時代が来た」と喜びもつかの間、登場したのがWeb3です。

 価値観を共有する者同士の情報流通の場が増えるでしょう。第2、第3のウィキリークスが登場するかもしれません。懸念されるのは分散が生み出すさらなる分断。メディアは新しい時代の波にどう向き合うか真剣に考える必要があります。

(磯貝 高行)

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