変化対応の弱体化が気がかり
日銀の異次元緩和が始まった2013年、私は日本経済新聞社の広島支局勤務でした。地元の有力輸出企業の業績が急回復していく半面、地元電力会社の調達コストが上昇し、地銀の収益環境が徐々に厳しくなっていったことを覚えています。金融緩和のメリットとデメリットをどうてんびんにかけるべきか、スタート時から考えさせられました。
あれから約10年。緩和政策に「細かな事実上の修正」はあれど、大筋の緩和姿勢は変わりません。一方でにわかに進んだ円安をきっかけに、日銀の政策が注目を集める機会が増えています。為替変動の増幅という副作用があってもなお緩和を継続する理由はどこにあるのか、第2特集で改めて探りました。今後の日銀関連のニュースを読み解く手掛かりにしていただければ幸いです。
気がかりなのは、取材する中で地方金融機関から聞いた「いまさら政策を正常化して国債価格が下落するのは困る」「金利が少しでも上昇すると住宅ローンで返済難が増える」と警戒する声。長く続いた緩和環境に適応してしまい、変化を受け入れる力が弱まっているのかもしれません。引き続き、影響を丹念にウオッチしていきます。
(三田 敬大)
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