ゾンビ企業と呼ばないで
今号の特集は「増殖 ゾンビ企業」です。ゾンビはブードゥー教でいう「生ける屍(しかばね)」。おどろおどろしいタイトルですが、ゾンビ企業とは経営が破綻状態にあるのに銀行などの支援によって延命し続けている企業を指します。
コロナ禍の緊急対策で各国の中央銀行が金融緩和を拡大した結果、世界的に過剰債務を抱えたゾンビ企業が増殖しました。日本でも実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」がゾンビ企業を増加させ、帝国データバンクはその数を16.5万社と推計します。
しかし、債務の返済に窮する企業を一律にゾンビ企業と呼んでいいものでしょうか。訪日外国人客が戻れば立ち直るはずの名門の老舗旅館もあれば、サプライチェーンの混乱で一時的に受注が減った技術力の高い町工場もあるでしょう。こうした企業の再生の芽を潰してはなりません。
一方、2021年の企業倒産件数は歴史的な低水準。手厚い支援で本来なら退場すべき企業が温存されているのも事実です。バブル崩壊後、銀行の不良債権処理先送りでゾンビ企業が増殖し、日本経済の再生が遅れました。生ける屍なのか、再生すべき企業なのか。金融機関の目利きが大切です。
(磯貝 高行)
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