日本企業は出遅れを挽回できるか

 第2特集で、mRNA薬のCDMO(開発製造受託機関)事業に乗り出した企業を取材する中で、2011年6月に米ワシントンの展示会を取材したときのことを思い出しました。パーティー会場で出会った韓国サムスン電子の方に取材を要請すると、その場でサムスンバイオロジクスの当時の最高経営責任者(CEO)との朝食会をセッティングしてくれました。

 CEOの話を聞いて驚いたのはその規模です。仁川空港近くにバイオ医薬の製造工場を建設し、数年後に合計10万リットルを超える規模にすると聞き、「ずいぶん強気だな」と思いました。韓国企業がバイオ医薬に進出することは既に報じられていましたが、「技術水準が日本ほど高くないので苦戦するだろう」というのが当時の日本の業界関係者の見方でした。

 その後、サムスンはバイオ医薬のCDMOとして急成長を遂げ、たちどころにグローバル大手のポジションを確立しました。「やるやる」と言いながら、出遅れた日本企業との違いはどこにあったのでしょう。mRNAで訪れた“次の機会”を逃さないためには、そのやり方を研究する必要もありそうです。

(橋本 宗明)

日経ビジネス2022年9月12日号 102ページより目次
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