「利他の心」貫いた平成の聖人
「資本主義の父」渋沢栄一氏、「経営の神様」松下幸之助氏。そして、8月24日に死去した稲盛和夫氏は後世に何と呼ばれることになるのでしょう。
明治・昭和・平成をそれぞれ代表する3人の経営者に共通するのは、人生を懸けて貫いた「徳」を中心に置く経営哲学です。渋沢氏は著書『論語と算盤』の中で利潤と道徳を両立させる経営のあり方を示し、「企業は社会の公器」と説いた幸之助氏は人々を豊かにする産業人の使命を全うしました。
その薫陶を受けた稲盛氏の経営の神髄は「利他の心」。「全従業員の物心両面の幸福を追求する」ために零細企業だった京セラの成長に命を懸け、国民のために通信料金を安くしようと第二電電(現KDDI)を立ち上げ、日本経済再生のために日本航空(JAL)の再建を無給で引き受けました。
そして情熱を注いだ若手経営者の育成。延べ2万6000人の塾生を輩出した「盛和塾」出身の松田憲幸ソースネクスト会長兼CEO(最高経営責任者)は、「経営が苦しかった時、稲盛さんの講話のCDを何度も聞いて勇気をもらった」と振り返ります。儒教でいう高潔で模範となる人物である「聖人」。稲盛氏はそんな言葉がふさわしい経営者でした。
(磯貝 高行)
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