朝令暮改経営と屋久島の意外な関係

 ワタミの渡邉美樹会長兼社長の趣味は屋久島での登山です。「趣味は屋久島」とは本人の談で、登頂回数は100回以上。通常は10時間以上かかるルートを7時間で往復するそうです。「ガイドよりも詳しいですよ」と誇らしげに語る表情からは屋久島へ深い愛着を持っていることがうかがえました。足腰を鍛えるためでしょうか、社内でもエレベーターは使わずに上り下りするストイックさには驚かされました。

 記事でも触れた通り、登山途中には経営課題を含め、色々なことを考えています。「登る時は悩んでいても、頂上の祠(ほこら)にお参りして下山する頃にはスッキリし、考えがまとまっている」とのこと。かつて手掛けた介護事業や現在は主力事業に成長した宅食の買収も、登山をしている時に決断しています。山を登っている間に情報は頭の中で整理され、山を下りている頃には「色々ひらめく」のだそうです。

 「唐揚げは過当競争で苦戦しているけど、加盟店オーナーの方々のためにも諦められない」と考え抜いた先に「見えた」答えが弁当市場への参入でした。常識にとらわれず、変化を続けるワタミの「朝令暮改経営」ですが、その源泉は屋久島の登山にあるのかもしれません。

(神田 啓晴)

日経ビジネス2022年8月8日号 102ページより目次
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