分断の時代のリスク経営
「誰もが国境のない世界を目指しているように見えた時代は過ぎ去り、突然、誰もが少なくともいくつかの国境が経済発展と安全保障の鍵であることを認識するようになった」──。
今号のグローバルインテリジェンスで、ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ教授の論文を紹介しています。グローバル化の弊害に警鐘を鳴らしてきた教授が、その衰退を管理する必要性を論じています。今号の特集「経済安保とは何か」と併せて読むと、より理解が深まるはずです。
米中経済戦争からロシアのウクライナ侵攻を経て世界は分断の時代に突入しました。グローバル化を前提に構築されてきたサプライチェーンは寸断し、エネルギーや食糧の価格が高騰しています。グローバル化による効率性と利潤を追求してきた企業にとっては、新しい時代のリスクにどう向き合い、事業をいかに守るかが問われています。
株主との対話も重要です。サプライチェーンの再構築やサイバーセキュリティー対策への投資は短期的に収益を悪化させるかもしれません。しかし世界が一変した今、持続的成長への条件として経済安保対応を経営に組み込む必要があります。
(磯貝 高行)
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