「にんげんだもの」と行動経済学

 「つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの」

 ノーベル経済学賞受賞者のリチャード・セイラー教授は昨年秋、日経ビジネスLIVEのウェビナーで詩人・相田みつを氏の有名な詩を紹介しました。

 「(不確実性の高い)人間的な要素を経済学に取り込むのが私の仕事です」

 心理学と経済学を合わせた行動経済学は20世紀半ばに生まれ、今ではマーケティングや金融の分野で幅広く活用されています。セイラー教授が唱える「ナッジ理論」は非強制的に人々の行動変容を促す手法で、例えばメールマガジン受信の初期設定を「登録」にしておくと大半の人が受信してくれる、といった販促策に使われています。

 気を付けなければいけないのは、行動経済学が「だましのテクニック」にも簡単に応用されてしまうことです。今号の特集「買わせる心理学」では景品表示法違反や悪質なステルスマーケティングの事例を指摘しています。「ナッジ」の反対概念で、サービスを解約する手順をわざと複雑にするといった「スラッジ」と呼ばれる手法も同様です。

 「企業が勝つための唯一のカギは『信頼』」。セイラー教授の言葉が胸に刺さります。

(磯貝 高行)

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