エネルギーに抜け落ちた視点

 「安定供給という観点ではエネルギーをみません」

 今年2月に取材した日本の大学教員がぽろっとこぼした言葉が私の耳に残っています。彼が書く論文は、企業に気候変動対応を強く求める内容。具体的には化石燃料系の資産を一刻も早く手放すべきとの主張をしています。

 脱炭素はもちろん大事です。しかし、世の環境団体もこの大学教員と同じように「安定供給」の視点が抜けているのではないか。そう思うと恐ろしくなりました。欧米の環境団体は、世界の主要企業の株主である機関投資家に対し大きな影響力を持っています。

 今回のウクライナ危機は「安定供給」という価値観の重要性を私たちに突きつけました。すでに燃料は高騰し、電気料金は上昇続き。脱ロシア依存を急ぐ世界がエネルギーの調達不安に覆われています。

 第2特集で取り上げたJERAの奥田久栄副社長に取材を終えての帰り際。「危機を脱すれば私たちはすぐにエネルギーの大切さを忘れてしまう。良くないですね」。3月に首都圏で起きた電力切迫を振り返りながら問うと奥田氏は笑顔で答えました。「エネルギーのことを忘れてみなさんが毎日楽しく過ごせるようにする。それが私たちの仕事です」

(中山 玲子)

日経ビジネス2022年4月25日号 98ページより目次

この記事はシリーズ「編集長の視点/取材の現場から」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。