「春闘」が終わった日
今から20年ほど前、電機大手の春闘を取材していた時の話です。当時はITバブル崩壊後の大規模リストラのさなか。各社労組は賃上げを早々に断念し、定期昇給(定昇)を含む賃金体系の維持が争点でした。集中回答日の未明まで各社の労使交渉は紛糾していたものの、電機連合のホワイトボードには「定昇維持」で横並びの回答。ぎりぎりの交渉は何だったのかと拍子抜けした理由は後日判明します。
春闘の回答後、複数の労使が「別途協議」と称して定昇延期や一律賃金カットで合意したのです。実質的な賃下げ合意に「春闘は終わった」と感じたのを覚えています。思えばその後の20年間、日本の賃金上昇が主要国に取り残される契機だったのかもしれません。多くの企業で春闘の争点は賃上げから雇用維持に変わり、働き方改革などのテーマに取り組むようになりました。メディアも既に「春闘」という言葉を「春季労使交渉」に変えています。
今号の特集は「漂流する賃上げ」。昨年12月20日号の「貧しいニッポン」、2月7日号の「低年金サバイバル」との3部作です。岸田文雄首相が掲げる「成長と分配」政策が経済界に浸透するのか。勝負の春を迎えています。
(磯貝 高行)
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