囲い込みと抱え込みの愚
日経ビジネスがキーエンスという企業の特集を組むのは2003年以来、実に19年ぶりです。当時の特集は「利益率40% 驚異の経営 キーエンスの秘密」。このタイトルの「40%」を「50%」に変えれば今回の特集タイトルが成立するくらい、その強さに陰りは見えません。なぜこの会社がコロナ禍の中でも強くあり続け、ライバル企業がなぜ追随できないのか。その秘密を再び解き明かそうと考えました。
「情報を囲い込むような行動は『ダサい』と見なされる」。今回の取材で最も印象に残った中田有社長の言葉です。一匹おおかみタイプが多い記者の仕事をしていると情報はなるべく一人で抱え込み、取材先を囲い込もうとします。取材源の秘匿の原則もありますが、自分の競争力を維持しようという思惑が先に立ちます。営業現場での顧客との付き合いも同様でしょう。しかしそれが全体の生産性向上につながるのかといえば多くの場合、答えはNOです。
米セールスフォース・ドットコムが後にシステム化したナレッジ共有の仕組みを、1974年の設立当時から実践してきたのがキーエンスなのかもしれません。しかもその仕組みをカイゼンし続ける企業文化。あなたの会社はまねできますか。
(磯貝 高行)
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