歴史築いたカリスマからのエール

 節分にその年の「恵方(えほう)」を向いて太巻きずしを食べる「恵方巻き」。この原稿の締め切りの2月3日にその起源を調べると、大阪の船場商人の商売繁盛の祈願事を1998年にセブン-イレブンが全国展開して一気に日本中に広がったのだとか。なるほど、私の子供の頃には知らなかったはずです。

 74年、東京・豊洲に第1号店を開店したセブン。コンビニエンスストアの先駆者として日本の流通の革新を続けてきました。24時間営業の開始から宅配便や公共料金の取り扱い、現金自動預け払い機(ATM)の設置。おにぎりをコンビニで買う食文化を作ったのもセブンでした。

 そんなセブンから「最近はあまり新しいものが生まれてないね」。今号の特集「セブンの覚悟」はその一言から生まれました。カリスマ・鈴木敏文氏の退任後に業績停滞期を迎え、再成長に向けてもがいている。その姿をありのままに描くことで、日本の流通業が人口減時代に生きる道を探る狙いです。

 「歴史から何かを学び取るのではなくて、自分が新しい歴史をつくるという考え方を」。特集に登場する鈴木氏の言葉はかつての確執を越え、井阪隆一社長へのエールだと感じました。

(磯貝 高行)

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