人生設計、低年金時代を前提に

 年金を世界で初めて導入したのは19世紀のドイツ帝国初代宰相、ビスマルクです。社会主義運動を厳しく取り締まる一方、労働者が安心して働くための社会保障制度を充実させる「アメとムチ」の政策で、帝国への忠誠心を高めました。

 日本では明治時代の海軍の恩給制度に始まり、第2次大戦中に工場労働者などを対象とする労働者年金制度が誕生しました。戦時下での労働者の愛国心を高める狙いがあったとされます。どうやら年金と政権維持は切り離せない関係のようです。

 今号の特集は「低年金サバイバル あなたにも迫る老後格差」です。岸田政権が掲げる「分配」政策の本丸といわれる年金改革。財源不足から今後、支給水準が大幅に引き下げられれば、老後の生活格差がますます広がることになります。特集では単に危機をあおるのではなく、低年金時代を前提に人生設計を見直す契機にしてほしいと考えました。

 年金とは本来、老いや病気で働けなくなった時のための保険です。健康に働き続けることができるなら、必要のないものかもしれません。91歳の総務部員の話を読んでそう思いました。さて、私もそろそろ老後のために健康に気を使わなくては。

(磯貝 高行)

次ページ 赴任者もつらいよ、長ネギ2本で800円