応援したくなるブランドづくり

 「マーケティングとは経営そのもので、消費者に自社を愛してもらうことが最終的なゴールだ」

 マーケティングの父として知られる経営学者、フィリップ・コトラー氏の言葉です。今号の特集は「ファンづくりの極意」。10分野の商品・サービスで1万人に「顧客推奨度(NPS)」を調査し、市場シェアだけでは分からない、コアなファンを抱えるブランドを割り出しました。巨大ブランドを抑えて上位にランクインした企業のマーケティングには学ぶべきことが多くあります。

 睡眠や仕事、家事を除いて私たちが自由に使える「可処分時間」は1日わずか6時間20分。様々なサービスや商品はこの時間の争奪戦を繰り広げています。コアなファンをつくり、彼らの口コミが新しいファンをつくる循環を描けなければ、消費者から飽きられ、時間の争奪戦の中で埋没していきます。

 コロナ禍の中で大型の飲食チェーン店に閑古鳥が鳴く中、地元民に愛された小さな店に人が集まっている光景を幾度も目にしました。お客さんが応援したくなるサービスは逆風にも耐えます。

 日経ビジネスも読者に愛される雑誌にならなければ、と思いを新たにする特集でした。

(磯貝 高行)

次ページ EVの課題解決こそ部品メーカーの針路