大ぼら吹きから資本家への転身

 大ぼら吹き、ペテン師、人たらし、革命家……。孫正義という人物を評する言葉はいくつもあります。織田信長と坂本龍馬をこよなく愛する孫さんは、こうした人物評を喜んで受け入れてきた感があります。そんな孫さんが昨年の株主総会で「資本家」を名乗り始めました。その真意を聞きたい、と思ったのが今号の特集の発端です。

 10年前に初めて会った時、孫さんは米通信会社の買収で「世界一の携帯電話会社になる」と燃えていました。その翌年に会うと、今度は再生可能エネルギーを大陸から日本に運ぶ構想を熱く語る。そして5年前にビジョン・ファンドを立ち上げた時には、もう通信やエネルギーへの関心は薄れていました。

 ころころ変わる孫さんの頭の中ですが、「時価総額世界一の会社になる」というゴールは変わっていないのでしょう。頂上に向かうルートはいくつでもあり、ようやく見つけた最短距離が「情報革命の資本家になる」という宣言だったと理解しています。

 なぜそこまで貪欲に頂点を目指すのか。かつて孫さんはこう答えました。「子供のころおやじに『100万人を統べる将になれ』と言われて育てられたんだ」

 さて皆さんは新年に何を誓いましたか

(磯貝 高行)

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