危機はどこにも去っていない

 日本人は欧米人と比べて遺伝子的にネガティブな性格なのだそうです。セロトニンという脳内物質の分泌量が少ないため、不安を感じやすいのだとか。

 感染に対する不安心理が強いため、3密を避け、マスク着用を徹底する。新型コロナウイルス感染者の減り方が世界的にも際立つ日本ですが、ワクチンの効果だけでは説明ができない「ファクターX」は意外とそんなところにあるのかもしれません。

 ウイルスの自滅説もあります。日本独自の変異を遂げたデルタ型がさらに変異を繰り返し、感染力を失って自滅したというものです。あるいは、日本はワクチン接種が他の先進国より遅れたため、デルタ型感染のピークとワクチン効果が重なって効率よく集団免疫を獲得したという説もあります。

 いずれにせよ、日本での感染縮小を完全に説明できる専門家はいません。偶然の積み重ねかもしれません。忘れてはいけないのは、わずか3カ月ほど前まで日本が医療崩壊の危機にひんしていた事実です。

 世界はいま、南アフリカで確認された新変異型「オミクロン」への警戒を強めています。コロナという未曽有の危機はどこにも去っていません。緩まず、「ネガティブ」に向き合いましょう。

(磯貝 高行)

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