東芝を導くリーダーの不在

 「自分は聞いていない。誰かがやってくれるだろう。組織のエネルギーを燃焼させるために、まずこの2つの言葉を追放しよう」

 戦後、石川島播磨重工業(現IHI)や東京芝浦電気(現東芝)の社長を歴任し、経団連会長も務めた土光敏夫さんの言葉です。1965年に経営難に陥っていた東芝の社長を引き受け、強烈なリーダーシップで再建を成し遂げました。「社員諸君にはこれから3倍働いてもらう。役員は10倍働け。俺はそれ以上に働く」。就任時の演説は歴史に残ります。

 今号の特集は「東芝解体」。アクティビスト(物言う株主)との対立の末、東芝は会社全体を事業ごとに3分割して上場する変革案を発表しました。しかし短期の利ザヤを狙うアクティビストの一部は分割案に失望しており、先行きは混沌としています。

 特集では2015年の不正会計以降、東芝がガバナンス不全に陥った経緯を振り返っています。分岐点で共通するのは「自分は聞いていない。誰かがやってくれるだろう」というリーダーシップの欠如でした。

 東芝が今後、3分割に成功したとしても3社をそれぞれ成長に導くリーダーは現れるのでしょうか。最大の課題はまた先送りです。

(磯貝 高行)

続きを読む 2/2 「北風と太陽」、どちらが企業を動かすか
日経ビジネス2021年11月22日号 106ページより目次

この記事はシリーズ「編集長の視点/取材の現場から」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。