防衛産業の疲弊はリスク

 「私が大事だと思うのは、安倍晋三首相が米国から大量の兵器を購入することだ。それによって米国には雇用を生み、日本には安全をもたらす」

 2017年11月の日米首脳会談でトランプ前大統領はビジネスマンぶりをいかんなく発揮し、日本が米国製の防衛装備品を買い増す道筋をつけました。対日貿易赤字の削減になりふり構わぬ姿勢を示すトランプ氏と、自動車への追加関税を恐れる安倍政権の間で成立した「ディール」です。

 それ以来、防衛装備品に占める海外調達額が年々増加し、日本の防衛産業に大打撃を与えています。事業撤退する企業も相次ぎ、防衛に関する日本の技術力に黄信号が灯っています。

 今号の特集は「沈むな防衛産業~技術革新の種 守れるか」。歴史的にも電子レンジやGPS(全地球測位システム)など軍需から民間に転用した技術は多く、防衛産業はイノベーションのゆりかごです。

 特集の中には「日本国内にどんな良い技術があるか、自分たち自身があまり理解できていない」という専門家の指摘もあります。防衛産業が疲弊する中、高い技術を持つ企業が海外勢に買収されれば、日本の安全保障に跳ね返ってきます。

(磯貝 高行)

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日経ビジネス2021年10月25日号 106ページより目次

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