「米アマゾン最大の敵」に会ってきた

 9月下旬、空気がひんやりと秋めいてきたニューヨーク市で「米アマゾン・ドット・コム最大の敵」ともいわれる人物に会ってきました。市内のアマゾン物流拠点「JFK8」に勤務していた2020年3月、同社の新型コロナウイルス対策が不十分として抗議した直後に解雇されたクリス・スモールズさんです。

 「どうしていたの?」と聞くと、「元気にしていた」と彼。アラバマ州での労働組合結成に向けた動きの応援に行くなど忙しくしていたと言います。今はJFK8前のバス停横にテントを張り、組合結成に向け署名活動中。21年4月のアラバマ州の投票では賛成票が足らず敗北しましたが、「今回は絶対に勝てる」と意気込んでいました。

 アマゾン従業員による労働組合結成は、民主党の悲願の一つ。州の司法長官がアマゾンの攻撃材料に使ったり、アラバマでも別の組織が介入して逆に従業員に疑念を湧かせたりするなど話は複雑になっています。でもスモールズさんの目は今も純粋なままでした。「今回は僕らの手だけで進めているから絶対に勝てる。働く人たちの環境を良くしたい」

 彼がアマゾンを変える日は、そう遠くないかもしれません。

(ニューヨーク支局 池松 由香)

日経ビジネス2021年10月11日号 100ページより目次
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