「『ガラケー』と呼ばれるのはとても不愉快」。10年ほど前、NTTドコモの『iモード』の名付け親、松永真理さんにそう言われました。

 2000年代まで通信会社とメーカーの二人三脚で『iモード』や『写メ』などの機能を次々に生み出した日本の携帯電話。その後、外来種であるスマートフォンに駆逐されますが、生物が独自の進化を遂げたガラパゴス諸島にちなんで「ガラケー(ガラパゴス携帯)」と呼ばれるようになりました。

 実は日本勢も当時、ガラケーで世界に挑みました。ドコモが各国の通信会社に出資し、富士通やNECとiモードの輸出を狙いました。しかし各国の通信政策の壁に敗れ、撤退します。

 その失敗をよく見ていたのが米アップルです。通信会社に従属しないスマホ文化を作り上げ、世界中のコンテンツがスマホに依存するプラットフォーマーのモデルを構築します。

 今週号の特集は「日本勢は『ガラゲー』か?~ゲーム進化論」。世界中から1億人以上のユーザーをいっぺんに集める巨大ゲームが続々と生まれています。中にはアップルに反旗を翻す新しいプレーヤーも登場しています。

 しかしそこに日本勢の姿はありません。日本のお家芸といわれたゲームですが、その進化の過程はかつて携帯電話が歩んだ道と重なります。

 なぜiモードは世界標準にならなかったのか。冒頭の松永さんはこう答えました。「日本にスティーブ・ジョブズがいなかったから」。世界のルールを変えるゲームチェンジャーの登場が待たれます。

日経ビジネス2021年9月27日号 7ページより目次
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