世界の都市総合力ランキングでロンドン、ニューヨークに次ぐ3位の東京。もし17~18世紀にこの調査があったら、「江戸」が断トツの世界1位だったのではないでしょうか。

 1590年、関東に転封された徳川家康は鎌倉でも小田原でもなく、国家100年の計をもって不毛の湿地帯だった江戸に移ります。氾濫を繰り返していた利根川の流れを変え、神田山を切り崩して湿地と海を埋め立てる巨大工事に着手。誰もが水を飲めるように玉川上水や神田上水の水道を整備し、船でモノを運ぶ水路を張り巡らしました。

 水との共生で人々が暮らしやすい街に変わった江戸は、18世紀には人口100万人を超える世界最大の都市に発展しました。8代将軍・吉宗は「目安箱」に投書された庶民の声を基に、無料の公的医療施設である小石川養生所を開設し、天然痘などの感染症の流行を抑えたといいます。

 今週号の特集は「スーパーシティ~都市DXの光と影」です。2030年を先取りした未来都市をテーマに、日本全国を巻き込む壮大なコンペが佳境を迎えています。補助金を頼みに地方創生を目指す自治体と、規制緩和のモデルケースを作りたい国。コロナ禍で政策の優先順位が下がるなか、双方の思惑のすれ違いが目立っています。

 大切なのは誰のための街づくりか。技術の実証実験をしたい企業でも、税収を増やしたい自治体でもなく、主役は住民です。300年の泰平を築いた江戸の街づくりに学びたいものです。

 さて、令和の日本ではまた政権が変わるのだとか。

日経ビジネス2021年9月13日号 7ページより目次

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