ニューヨーク、ロンドン、上海など編集部の海外支局長を集めて議論するリモート会議を定期的に開いています。早朝、夜間など各地の時差はあるものの、それぞれ自宅から気軽に世界中とつながることができる働き方は、コロナ禍が生んだ新常態といえるでしょう。編集部には東京から軽井沢に移り住んだつわものもいます。

 今週号の特集は「シリコンバレーはもう古い? ~変わるスタートアップの地政学」です。

 コロナ禍をきっかけに脱・シリコンバレーの動きが加速しています。シリコンバレーの源流企業である米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)や米オラクルが相次ぎ本社をテキサス州に移転。米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)ら一部の起業家や投資家もシリコンバレーを離れました。

 生活費や税負担の高さに加えて、リモートワークの定着が要因です。ヒト・モノ・カネ・情報の集積でイノベーション(新結合)を生み出してきたシリコンバレーですが、最近では集積を超えた「過密」が目立っていました。

 家賃の高騰は車上などで生活する「ワーキングホームレス」を生み、地元市民に交通渋滞の象徴とみなされるグーグルとアップルの社員送迎バスが襲撃される事件も起きていました。

 集積から過密、そして分散へ。インナーサークルともいわれるシリコンバレーが生み出してきたイノベーションが、ポストコロナの分散の時代にどう変化していくのか。その新しい実験に注目です。

日経ビジネス2021年8月30日号 9ページより目次
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