今号の編集長インタビューに登場するサントリーホールディングスの新浪剛史社長が、かつてハーバード大学経営大学院で学んでいた時の話。企業文化を学ぶコースに、トヨタ自動車、松下電器産業(現パナソニック)、ソニー、フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)の経営幹部が登壇して、それぞれ企業理念を語ったそうです。

 「フォードとGMの話はほとんど一緒でしたが、トヨタも松下もソニーも会社のミッションやバリュー、ビジョンが全く違う。社風ですね。経営陣がそれを語れない会社はだめだと思いました」。サントリーの創業精神を伝承する新浪さんの原点です。

 今号の特集は「良い社風、悪い社風」。企業不祥事が起きるたびに「内向きの企業風土を変える」、「上にものが言えない社風を改める」など反省の弁が繰り返されます。しかし、それが徹底されているのかは疑問です。

 社風とは本来、創業精神が脈々と受け継がれ、経営理念として社員の行動原理に浸透したものであるはず。「悪い社風」があったとしても「悪い創業精神」はありません。

 株主の議決権行使に介入した東芝の経営理念の中には「誠実であり続ける」、検査不正を隠蔽した三菱電機には「社会と顧客の満足が得られる製品・サービスを最高の品質で提供する」という言葉があります。現在の社風との断絶を感じざるを得ません。

 創業精神を繰り返し語り、社員に浸透させるのが経営トップの重要な役割です。あなたの会社の創業精神、言えますか?

日経ビジネス2021年8月16日号 7ページより目次
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