「我々の時代に起きた悲劇の結果、我々は前より賢明になった。しかし人は去り、別の世代と交代していく。新しい世代に残せるのは、我々と消滅する我々の経験ではなく、制度である」
欧州統合の父と呼ばれるフランスの事業家・政治家、ジャン・モネの言葉です。2度の大戦で疲弊した欧州が同じ過ちを繰り返さないよう、争いの原因になった石炭などの資源を共同管理する欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)がモネの構想のもとで1952年に発足。その後の欧州共同体(EC)、欧州連合(EU)の母体になりました。
米中の覇権争いが本格化する中、EUの存在感が高まっています。経済活動に影響を及ぼす制度(ルール)形成が力の源泉です。とりわけ環境分野では、EU基準をグローバルスタンダードにすることで外交や産業政策を優位に進める狙いです。モネが目指した平和のためのルール作りは、世界経済の主導権を握るためのルール作りに形を変えています。
今週号の特集は「EV覇権 欧州の野望」。EUが7月14日、2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する方針を打ち出し、世界の自動車業界に激震が走っています。環境規制が不十分な国からの輸入品に対しては23年から国境炭素税を暫定導入する計画です。
EUを操るユーロクラット(欧州官僚)たちがどこまで地球環境のことを真剣に考えているか分かりませんが、彼らは欧州を電気自動車(EV)生産の集積地にする野望を隠していません。日本の自動車メーカーの技術力と対応力が試されます。
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