5大陸を表す5色の輪。近代オリンピックの代名詞である五輪旗が初めて使われたのは、1920年のアントワープ大会(ベルギー)でした。第1次世界大戦の戦禍からの復興を願い、五輪は「平和の祭典」に変わりました。

 この大会に込められたもう一つの復興の願いが歴史の中に埋もれています。当時、世界的に大流行した「スペイン風邪」。第1次大戦の犠牲者を大きく上回る5000万人の死者を出したとされる人類史上最悪のパンデミックは、大会と前後して終息に向かいます。

 今週号の特集は「コロナ五輪という賭け」です。アントワープ大会から1世紀。まもなく開催される東京五輪が「コロナに打ち勝つ大会」となるのか。世紀の失敗として歴史に刻まれるのか──。紀元前8世紀に始まった古代オリンピックも疫病を鎮めるための神託が起源といわれます。

 「お・も・て・な・し」がブームになった東京五輪決定の2013年。2年前に起きた東日本大震災の記憶がまだ生々しく、世界に日本の復活を示す「復興五輪」を誰もが期待しました。

 しかしコロナ禍は被災地が待ち望んだインバウンド需要を蒸発させ、「復興五輪」という言葉すら消去しました。訪日外国人をおもてなしするはずだった観光業や飲食業は度重なる緊急事態宣言に疲弊しています。

 北海道も福島県も無観客開催となり、安倍晋三前首相がこだわった「完全な形での開催」は実現しません。しかし、アスリートたちの熱戦と、復興を成し遂げた被災地には惜しみない声援を送りましょう。

日経ビジネス2021年7月19日・26日号 11ページより目次

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