スマイルカーブ理論。2000年代前半に電機産業で流行した付加価値分析です。製品の製造工程は利益率が低く、上流の部品と下流のサービスの付加価値が高いというもの。横軸に製品の一生、縦軸に付加価値をとると人が笑った時の口のような曲線になります。
この理論をあまり聞かなくなったのはその後、日本の電機大手が上流でも下流でも稼げなくなったからでしょう。上流の液晶や半導体は韓国・台湾製に駆逐され、下流のサービスはスマホ時代を築いた米アップルや米グーグルに根こそぎ持っていかれました。
今週号はソニー特集です。業績悪化で株価が暴落した03年4月の「ソニー・ショック」から18年。リストラを繰り返し、もがき続けたソニーが復活しました。21年3月期の純利益は初の1兆円超え。そこには、売り上げの大半をエレクトロニクスで稼いでいたかつてのソニーの姿はありません。
ソニーは今やゲーム、映画、音楽のコンテンツとソフトで稼ぐ会社です。半導体事業は画像センサーに集中し、世界シェアの45%を占めます。製品の上流と下流で稼ぐスマイルカーブを愚直に追い求めたのは、電機大手の中でソニーだけだったのかもしれません。
なぜそれが可能だったのか。創業者・井深大氏の社員向けメッセージにそのヒントを見つけました。「もしも、われわれの考えがハード一辺倒なら、明るい将来は望めないであろう。ソフトをできるだけ深く開拓することにより、世界中に入り込むことができる」。ウォークマンが世に出る2年前、1977年の言葉です。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「編集長の視点」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?